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社会は、予知不能で不確実

元旦の朝日新聞に載っていた、対談『狩りとケアから考える』を読みました。話し手は、グリーンランド最北の村をベースに毎冬、犬ぞりで2ヶ月近くの旅に出ている作家で探検家の角幡(かくはた)唯介(ゆうすけ)さんと、東京工業大学・人類研究センター長の伊藤(いとう)亜紗(あさ)さんという「美学者(?)」の二人で、今の自分が考えていることと重なり、見直すヒントを得ることができました。



記事の見出しには【コロナ禍は、私たちが否応なく、コントロールできない相手と「共に在る」事実を突きつけた。ウィルスだけではない。人間を脅かす自然はもちろん、家族、自分の体さえ、時には理解を超えた存在になる。わからないままそこに存在するものと、どう関係を結べるのか。共に在る意味とは? シリーズで考えたい。まずは、動物を狩りながら極寒の地を旅する探検家と、理屈だけでは説明がつかない人間の体を見つめてきた美学者の二人が、『狩りとケア』というかけ離れた現場から話し合った。】と書いてありました。



内容は、伊藤さんが「新型コロナの蔓延当初、当たり前の日常が壊れたことに『どうしよう』とひどく慌ててしまいました。『想定外』に弱いんです。でも、角幡さんが書かれたイヌイットの『未来は予知できない』という世界観は、想定外の事態に対して柔軟な対応力を持ち、想定外を想定内にする力が強いと感じました。」と話すと、角幡さんが「イヌイット語で『わからない』という意味の『ナルホイヤ』が彼らの決まり文句です。天気を聞いても、予定を聞いても、『ナルホイヤ』で会話が途切れる。イヌイットの生活は自然とともに在るので、予期不能で不確実な自然というものを、長い年月で知り尽くしている。だから『ナルホイヤ』は、未来は予測不能だから、何事もいま目の前で起きている現実から判断しなければいけない、さもないと進むべき道を誤る、という彼らの道徳観でもあるのです。」と説明します。さらに、「イヌイットは、獲物がたくさんいない地域を旅するけれど、大地への信頼があり、獲物はなんだかんだ言って獲物を取って無事に帰れると考えているので、帰路の食料を持たずに旅ができる。それは、不確実性やリスクのない『安心』ではなく、不確実性があるけれど『信頼』するという態度ですね。」とイヌイットの世界観を話していました。



話題は、「介護の現場」の話になり、「介護計画は立てるけれど、常に計画倒れが起こる。計画へ固執すると、目の前の現在が見えなくなり、判断を誤ってしまう。」と話すと、「『介護やケア』は、『狩り』の本質と共通するものがあると思います。山頂へ到達するのが目的の登山なら征服的なところがあるが、狩りは確固とした自分が相手を攻略するという征服の思考ではダメ。獲物を取るには、動物が現れる場所や時期など、相手の調子に合わせ、自分を変える必要がある。土地や動物の事情に組み込まれることが一番効率的になる。」と対話が続きます。お二人は、「『共に在る』ものを受け入れるには、大地や相手に組み込まれ、見直す必要がある。」と話されていました。