制服や体操服を製造販売する会社の調査で「夏でも長袖」派は中高生の女子の3人に1人以上で、男子は4人に1人に近い、という結果が朝日新聞(6月30日付)に載っていました。会社の担当者は「今の中高生は人からどう見られるかを気にする傾向があり、おしゃれのセンスや美意識も高いので、ファッションとして、または腕の太さや腋毛を隠したいといった理由で長袖を着ます。半袖は日に焼ける、長袖をまくればいいので半袖は必要がない、といった理由もあるようです」と話しています。
この記事を読んで、30年以上前のことですが、夏でも長袖の体操着のジャージ脱がなかった塾生のことを思い出しました。その生徒は、母親に連れられてやって来ました。塾に入る動機は母親が説明するので、状況は理解できましたが、私は本人の気持ちを確認したいので、話しかけました。しかし、彼はほとんど言葉を発することなく、うなずくなど態度で反応するだけでした。とりあえず私に対して不信感を持った様子はなかったので、塾に通ってくることになりました。勉強は通信制高校のレポートの手伝いでしたから、雑談をすることもなく黙々とレポートを仕上げるだけでした。
夏になって暑い日が続くようになってからも、彼はジャージを脱ぐことはありませんでした。いやどちらかというと、私には袖を伸ばして腕を隠そうとしているように見えました。とても理由を聞ける感じではなかったので、そうすることで安心して座っていられるのだろうと思い、私は気にしないようにしていました。2年ほど経ってからだったか、通信制高校の生活に慣れたからなのか、袖を伸ばして着ている感じはしなくなり、雑談程度の会話もするようになってきました。高校を卒業するころには、ジャージを着てこなくなりました。理由を聞かないまま終わってしまいましたので、分からないのですが、そのころ私は「人の視線というのは、本当に肌に突き刺さってくるのではないだろうか?」だから彼は、ジャージで、その「痛み」を防いでいるのだと思っていました。
記事の本文を読んでみると、小学生当時にジャンパーを着て登校を続け、中学・高校と進み、高校を卒業するころになって半袖を着るようになったという、現在大学生の方に、理由を聞いたら、「自分を守るため」という答えが返ってきたという話が書いてありました。気候変動で、暑さが厳しくなってきましたので、熱中症のことが気になりますが、人にはそれぞれ、いろいろなわけがあるのだから、その人の心に寄り添うことなく、見た目や常識(?)で決めつけ、判断してはいけない。その人は、言葉を発していなくても、態度や表情・しぐさなどで、いろいろ伝えているということを思い出しました。